小樽市総合博物館「常設展示をじっくり見よう」ホキ2200@佐藤元治
2010年08月10日
あまたある自治体の博物館施設の中で、これほど鉄道関係が充実しているところは、そう多くないでしょう。北海道の鉄道の発祥の地、旧手宮駅構内に設けられた小樽市総合博物館の見所といえば、屋内外に展示されている50両余りの鉄道車両。準鉄道記念物「しづか号」や、動態保存機「アイアンホース号」など、鉄道ファンならずとも心打たれる名機が並んでいます。
こうした著名な車両に限らず、北海道の産業を支えた車両1つ1つに目を向ける試みが始まりました。「ギャラリートーク 常設展示をじっくり見よう」。北海道の開拓を支えた鉄道遺産の保存と活用に取り組むNPO法人「北海道鉄道文化保存会」が、同博物館と共催し、7月31日に第1回を開きました。

<写真:小樽市総合博物館で屋外展示されているホキ2226.「苫小牧駅常備」の文字が見える>
栄えあるトップバッターに選ばれたのが「ホキ2200形」。小麦などの穀物を、粒のまま積み込むために作られたホッパ車です。小樽市総合博物館ではワム(有蓋車)、セキ(石炭車)、トラ(無蓋車)とともに展示されています。残念ながら出席できませんでしたが、トーク時の配布資料をもとに、この車両の意義を考えてみたいと思います。
ホッパ車とは、粒上の貨物を積み込む貨車です。穀物のような粒状のものを貨車に載せるには,普通は袋詰めしてから重ね置きしますが、ホッパ車は、そのまま積むことができます。積載部は漏斗状で、積み込むときは車両の上のふたを開けて流し込み、卸すときは車両下のふたを開けます。袋詰めが必要なく、積み卸しも「ザーッ」と流し込むだけ。専用の設備は必要となりますが、手間も時間も大幅に切り詰めることができます。
運ぶものに合わせて貨車や積み卸し設備まで一貫して考える-。国鉄は1960年代に、こうした「物資別適合輸送」に着手しました。ホキ2200形は1966年に登場。まさに鉄道貨物の全盛期でした。
穀物の大量輸送を必要とする社会的背景もありました。高度成長期の中、国産の穀物が徐々に減少。船で大量に輸入された穀物を内陸部に運ぶ必要があったのです。小麦やトウモロコシなど、飼料用作物の輸送に、ホキ2200形は活躍しました。配布資料に掲載されていた「手宮駅の貨物取り扱い状況」(1979年度)によると、手宮駅からの発送貨物99,213トンのうち飼料が63%、小麦粉が12%を占めていました。荷主も1位が飼料会社、2~3位が製粉会社。ちなみに到着貨物は159,743トンで、石炭が73%となっています。

<写真:こちらは動態保存機アイアンホース号。義経、弁慶、しづかと同じ米ポーター社が1909年に製造した=2009年8月、「アイアンホース号生誕100年祭」で>
物資別適合輸送は、セメントや石油、紙でも行われました。セメントは専用ホッパ車、石油はタンク車、紙は有蓋車が使われました。ちなみに、小麦はホッパ車ですが、さらに粒が細かい小麦粉ではタンク車も活躍しました。配布資料によると、日清製粉には小麦粉専用の私有タンク車があったそうです。
残念ながら、こうした物資別輸送にふさわしい貨車は、今はほとんど見ることができません。貨物の大半がコンテナ輸送に切り替わったからです。貨車からトラックへ簡単に積み替えられ、必要に応じてそのまま倉庫としても活用できるのがコンテナ。小回りのよさでは太刀打ちできません。その変わり、今はタンクコンテナなど、さまざまな専用コンテナが見られるようになりました。
ギャラリートークでは、酪農学園大の飼料作物研究室の協力で、積荷となった麦類やこうりゃんも展示されたとのことでした。次回は8月21日午前11時から。郵便荷物合造車をテーマに、スユニ50形、キハユニ25形を取り上げるそうです。(佐藤元治)
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