コートもいらない「A列車で行こう」の旅

2016年01月14日

 JR熊本駅を発車して38分間という特急の乗車時間は、ハイボール2杯を楽しむには短かすぎた。ジャズの名曲「A列車で行こう」が、しつこいぐらいに流れるJR九州の観光列車「A列車で行こう」車内。1杯目は、青い海の向こうに少しかすんだ雲仙・普賢(ふげん)岳を眺めながら飲めたのだが、2杯目は終着の三角(みすみ)駅に滑り込む直前に、ぐぐっと飲み込まざるを得なかった。

 暮れも押し迫った12月29日、福岡空港から地下鉄でJR博多駅へ。九州新幹線で約40分ほどで熊本駅に到着し、駅近くのホテルで一泊した。当初は福岡空港から天草空港へ有明海を30分でひとっ飛びする予定だったのだが、いろいろあって日程を2度変更。天草エアラインの便を一度キャンセルして、再度予約しようとしたら満席になっていた。しかし、そのおかげで久々に「A列車で行こう」に乗り込めたのだった。

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JR熊本駅を出発前の「A列車で行こう」。ホームは高架上の新幹線ホームに隣接している

 

 「A列車」は、JR九州によると「16世紀の天草に伝わった南蛮文化をテーマにデザインされたドラマティックな特急。落ち着いた色調の木やステンドグラスを配したインテリアは、まるで映画のワンシーンのよう」という2両編成の特急だ。熊本―宇土―三角を土日や休日などに3往復している。BGMはもちろん「A列車で行こう」を主に、ジャズのスタンダード・ナンバーだ。

 さて、「A列車」は三角駅前の三角港から天草上島の本渡港までクルーズ船「天草宝島ライン」に接続している。今回の旅の目的地は故郷の天草市(旧本渡市)だ。

 熊本駅は、新幹線ホームと隣接した高架上のホームを出発した。早速、バーがある1号車に向かうと、台湾の若いカップルらがソフトドリンクをいろいろ注文している。

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1号車にあるバー。土産物も販売している

 

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車内は、金ぴかが少し目立つ

 


 私は、地元のデコポンの果汁入り「Aハイボール」を、まず注文。席に戻り一口二口と含んでいたら、宇土を過ぎて、有明海の干潟が見え始めた。

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まずは「Aハイボール」を注文。有明海の向こうに、島原半島が見えてきた

 

 

 思ったより甘くて、おいしいとは言えないが...。すぐに空いてしまったので、有明海が見えるうちにと、急いで2杯目のカボス入り「Kハイボール」をチョイス。窓辺に置いて写真を撮っていたら、線路は山中に入り、三角半島を斜めに横切り始めた。車窓の風景は今ひとつで、写真にはならない。そうこうしているうちに、半島の反対側、不知火海が見えてきて、もう三角駅。子供の頃にも乗った三角線だが、こんなに短時間だったっけ。当時は鈍行だったからだろうか。記憶が混乱する。

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三角駅に到着した「A列車で行こう」

 

 
 まあ、あっという間の鉄路の旅が終わると、スーツケースを引いてクルーズ船乗り場に。

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本渡港までのクルーズ船は小さい

 


 船は75人乗り。30人弱の乗客は半数以上が外国人観光客のようだったが、そのほとんどは途中の松島で下船し、本渡港までは帰省客ばかり10人ほど。快晴で、日差しは温かく、デッキ上でもコートはいらない。懐かしい有明海と島原半島の風景が広がる。天草エアライン「イルカ号」で30分で一またぎするはずだった海だが、風も心地よいし、こうした旅もいいなと思えてくる。

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陽光を浴びての航海は、デッキ上でもコートは不要だった

 

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有明海の向こうは島原半島。最高峰は雲仙・普賢岳。1792年、雲仙噴火に伴う眉山の山体崩壊で、有明海のこちら熊本側を津波が襲ったのが島原大変肥後迷惑(しまばらたいへんひごめいわく)と呼ばれる大災害

 


 三角港から1時間で本渡港に着くと、船内でも聞こえた「A列車で行こう」がまたも流れている。ちょっと、うんざりしてきたのだった。

 鉄路と特定のメロディーと言えば、僕は国鉄時代の豊肥線・豊後竹田駅(大分県竹田市)を思い出してしまう。高校生のころ、熊本からの急行がホームに到着すると、滝廉太郎の「荒城の月」が流れていた。そこで、バスに乗り換え、祖母山(そぼさん)、傾山(かたむきやま)の登山口に向かったものだ。滝廉太郎は子供時代を竹田で過ごしたそうだが、「荒城の月」のモデルは、仙台や会津若松などの説も有力。だけどWikipediaで調べると、今でもあの到着メロディーは健在らしい。いつか紅葉の傾山に登るついでに寄ってみようか。

(文・写真)電子メディア局・高田純一

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