引退目前のトワイライトエクスプレス のんびりゆったり師走の旅

2015年02月05日

 3月12日出発の運行を最後に廃止される寝台特急トワイライトエクスプレス(以下、トワイライト)。運行終了が迫り、今やその寝台券は極めて入手困難で、プレミアチケット化している。昨年5月にJR西日本が2015年春限りでの廃止を発表。それまでも根強い人気はあったが、それ以上に人気が高まっている。かつてトワイライトの運行ルート上である北陸地方に住んでいた私にとっては二度乗車経験のある思い出深い列車だ。幸運にもチケットを確保できた昨年12月、札幌発のトワイライトエクスプレスの旅に出た。

 午後2時前の札幌駅。駅構内は日中の落ち着いた雰囲気が漂う時間帯だ。まずは、出発前に西改札口横の「北海道四季彩館」で大量の土産品、弁当などを買い込む。改札を抜け、4番線ホームに着くと同時にトワイライトが入線してきた。荷物が非常に多く、ビデオカメラを取り出すのに手間取り、手持ちのiPhoneで入線の様子を撮影することになったが、まずは乗車。6号車のB個室シングルツインに荷物を置いた後、一度外に出て先頭まで撮影に向かった。

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 買い忘れた缶ビールをホームの売店で購入すると、ほどなく発車時間に。午後2時5分、定刻通り札幌駅を出発した。

 今回はJR北海道が企画する「トワイライトエクスプレス&JAL」という旅行商品を利用した。この商品は道内各駅からトワイライトに乗車し、翌日以降に京阪神か北陸のホテルに宿泊し、空路で北海道に戻る、というものだ。みどりの窓口よりもチケットを確保しやすいとにらみ、この商品を選択した。ようやく予約が取れたのだが、急な事情で富山県の高岡駅で途中下車する事態に。大阪での宿泊と帰りの航空券を泣く泣く放棄することになった。終点まで乗車できず残念だが、気持ちを切り替え、徹夜でトワイライト乗車を味わうことを決めた。

 出発直後に4号車の展望車「サロンカー」に足を運んだ。既に席は埋まっている。この調子だとサロンカーは夜中までお預けの予感。ひとまず、お隣の食堂車でシャワー利用券(320円)を確保した。シャワー利用は時間制で、乗車直後にもかかわらず既に半分ぐらいの時間帯が埋まっていた。

 外は快晴。12月は日が傾くのが早い。苫小牧の手前から北海道らしい雄大な風景が広がる。苫小牧を過ぎると、この日は樽前山が右手にはっきりと見え、車内アナウンスで樽前山の特徴、沿線が競走馬の産地であることなどが説明された。

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 ほどなく食堂車係員が食事の案内にやって来た。翌朝の下車時刻は早いが、迷わず朝食を予約する。どうしん鉄道ブログ執筆者で、北海道鉄道観光資源研究会メンバーの佐藤臣里さんから「食べる価値あり」と勧められていたからだ。午前6時からの時間帯を予約した。この日は団体客も乗っているようで、大手旅行会社の添乗員が廊下から各部屋の客に様々な説明をしている姿も見られた。

 室蘭には午後3時48分着。日没が近く、もう家々には明かりが灯っている。乗車記念グッズの販売がそろそろ来るはずだが、なかなか来ない。しびれを切らし、サロンカーに向かうと行列ができていた。販売員が大勢の購入者に捕まっていたのだ。私も列に加わり、10分ほど待ち、ボールペンやキーホルダー、エコバッグやスポーツタオルなど(計約6000円)を購入した。大人買いとまでは言えないが、最後の乗車になるだろうと思い、随分と買ってしまった。

IMG_0988.JPG 噴火湾を間近に見ながらのんびりしていると、道内での最終停車駅「洞爺」はもうすぐだ。到着後、列車待ち合わせで10分ほど停車。ホームでたっぷり写真撮影を楽しんだ。

IMG_0673.JPGDSC_0135.JPGDSC_0142.JPGDSC_0148.JPG 洞爺駅発車後は、部屋で夕食。といっても、札幌駅で買った弁当(駅弁ではない)を缶ビールとともに味わっただけ。

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 午後6時半ごろ、暗闇の中、北海道新幹線・新函館北斗駅の姿を確認。五稜郭駅には午後6時45分に到着した。機関車の付け替えで約20分停車。函館では雪が強まり、冬景色となっていた。

 トワイライトは津軽海峡線に入り、午後7時40分ごろに木古内駅を通過。午後7時50分過ぎに青函トンネルに入った。ちょうどシャワーの予約時間になり、シャワー室へ。サロンカーの端に2つあるシャワー室はそれぞれに脱衣スペースがあり、さらに扉を開けるとシャワースペースという構造。

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 脱衣スペースにある機械にシャワーカードを差し込むと、さっそくシャワーを浴びることに。そこで気づいた。シャンプーを忘れた。面倒なので備え付けのボディソープで頭を洗った。特に問題はなかった。シャワーのお湯が出る時間は6分。短いように思うが、意外と時間を持て余した。女性ならば時間が足りないかもしれない。青函トンネルを走行する反響音を聴きながら、シャワーを浴びることも最初で最後だろう。貴重な体験となった。

 シャワーから部屋に戻ると、午後8時27分に青函トンネルを出た。いよいよ、本州に入った。午後9時から食堂車は予約なしで利用できる「パブタイム」なのだが、記念品の購入にお金を使いすぎたので、断念。外は真っ暗だが、青森県内もかなり雪が積もっているのが分かる。青森駅には午後9時16分に到着。客車の扉は開かない。再び機関車の付け替えのための停車だ。

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 青森駅は午後9時53分発。外は吹雪で、青森市内は札幌よりも雪が多い印象を受ける。午後10時ごろ、新青森で列車待ち合わせのため、運転停車。吹雪が続いている。午後10時30分ごろ、弘前に。窓の外側はすっかり凍りついている。この後も行程は順調だったが、雪は秋田県に入っても続く。秋田駅には午前0時35分ごろに到着。午前2時には山形県の酒田に。寝静まり、車内はひっそり。サロンカーに足を運んだが、さすがにこの時間になると、私ともう一人しかいない。その一人は中年男性で、三脚を使いビデオカメラで暗闇の車窓を延々と撮影しているようだ。私もサロンカーを撮影に来たのだが、撮影にはこの時間がちょうど良いかもしれない。酒田も雪が積もっている。列車は庄内平野を南へひた走る。

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DSC_0206.JPGのサムネイル画像 午前3時40分過ぎ。新潟県の村上市付近まで来た。ひどい吹雪で、雪が窓を叩く音が聞こえる。午前4時38分に新津駅に到着。本州側で初めて客車の扉が開く駅だ。窓は一層、凍りつき、まるで北海道内を走行しているかのようだ。雪はますます強くなっている。

IMG_0709.JPG 午前4時41分に発車。この雪の中でも定刻からわずかの遅れで走っている。なんとも力強い。この後、意識が遠のき少し眠ってしまった。

 1時間後に目が覚めた。朝食は午前6時からだが、10分前の5時50分には食堂車隣のサロンカーに集合しなくてはいけない。6時になり、食堂車「ダイナープレヤデス」に移る。食堂車は4人掛けのテーブルと、通路をはさんで2人掛けのテーブルという並び。私は2人掛けの席を案内された。各テーブルとも埋まり、人気の高さをうかがわせる。食前のドリンク、先付け3種、メーンプレート、フルーツなどが次々と運ばれる。どれも上品な味わいで、予想以上に美味しい。コーヒーはおかわり自由だ。トワイライトの食堂車ではパブタイムで簡単なつまみを注文した経験があったが、朝食は手が込んでいるし、一味違った。

IMG_0714.JPGIMG_0721.JPGIMG_0727.JPGDSC_0226.JPG 相席の中年男性に気を遣いながら、iPhoneで料理の撮影を試みるが、揺れがひどく手振れで何度も撮り直すことに羽目に。これならば部屋に置いてきた一眼レフカメラで撮影した方が良かったとちょっと後悔。朝食は時間制で私は午前6時から6時45分まで。あっという間に時間は過ぎてしまった。朝食は1620円(税込)。シティホテルの朝食の価格とそれほど変わらず、味も良かったので予約して正解だった。

 朝食を終え、部屋に戻ると外は徐々に明るくなってきた。鉛色の日本海が迫り、車窓から波しぶきが見える。夏よりも冬の方が日本海らしさを感じさせる。冷え込んでいるせいか、時折、海面には「けあらし」も。

DSC_0259.JPGDSC_0246.JPG 午前7時15分ごろ、いよいよ目的地である富山県内に入った。黒部川を越え、富山平野を遅れもなく順調に進む。

DSC_0265.JPG 今年3月14日に開業する北陸新幹線の高架が迫ってくると、午前8時ごろ富山駅に到着。これまでも北陸と大阪、名古屋を結ぶ特急列車の始発駅であり、規模は大きかったが、新幹線開業に合わせ高架化されるため駅の風貌も一変した。

DSC_0275.JPGDSC_0288.JPG 富山駅を出ると、高岡まではわずか15分ほどの距離で、慌しく身支度を整え、下車の準備をする。午前8時18分、定刻通り高岡駅に到着。下車したのは私のみだった。次の停車駅である金沢では下車する人もいるだろう。大半の乗客は京都や終点・大阪まで行くはずだ。残りの区間を乗車できず恨めしく思いながら、高岡駅のホームでトワイライトを見送った。

DSC_0314.JPG トワイライトは10年ぶり3回目だったが、今回も大阪~北陸間の乗車は叶わなかった。できることなら、大阪~札幌の全区間(約1500キロ)、約22時間の旅を一度、味わいたかったところだが、運行終了を前に乗車できただけでも本当に幸運だった。

 それにしても、北陸にゆかりのある者としてトワイライトの廃止は返す返す寂しい。かつて金沢から札幌まで乗車した際、金沢駅ホームの電光掲示板に「札幌」の文字を見た時は非常に感慨深いものがあった。これだけの人気列車、まさか廃止の日が来るなど想像もしていなかった。未だに信じられない思いでいる。
 
 北海道新聞でも紹介している(http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/life-topic/life-topic/1-0096483.html)が、運行終了まで残り1カ月。チケット確保は極めて難しくなっている。さすがに乗車は無理だ。札幌駅のホームで最期の雄姿を見届けようと思う。 

(文・写真)電子メディア局 河合祥悟

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