北海道新幹線の札幌延伸にむけての政府・与党方針が固まった。21日には並行在来線経営分離を地元・函館市長が同意し、今後はクリアすべき条件の詰め作業などに移ることになる。
7年前、新青森―新函館(仮称)着工決定の一部始終を、東京支社で取材していた。当時は自公政権、いまは民主党政権(正確には国民新党との連立だが)となったが、政調コアメンバーが関係者と調整して党、政府と合意の手順を踏む方法はほとんど変わらない。
実は、整備新幹線問題で重要なのは、政府与党申し合わせに書かれる文言の書きぶりだ。ここに、各区間の沿線自治体の利害調整、財源をめぐる攻防などすべての思惑が凝縮されている。

<写真:2005年5月に行われた新函館(仮称)延伸の起工式>
2004年12月の「政府・与党申し合わせ」の詳細内容を国土交通省が記者会見する前に、ある与党の有力筋から「申し合わせの文章で、北海道と北陸の表現が若干違う。そこを突くと面白いよ」との話を聞いた。
文書では「北海道新幹線新青森―新函館間 所要の認可等の手続きを経て平成17年度初に着工し、平成27年度末の完成を目指すこととし、できる限り早期の完成に努める」「北陸新幹線長野-金沢車両基地間 フル規格で整備するものとし、富山-石動間、金沢-金沢車両基地間については、所要の認可等の手続きを経て、平成17年度初に着工することとし、長野-金沢車両基地間で一体的に平成26年度末の完成を目指すこととし、できる限り早期の完成に努めることとする」とある。
一見すると似たような文章だが、北海道は「完成に努める」、北陸は「完成に努めることとする」と微妙に違う。これが与党筋では「『こととする』は、より強い意思。北陸側の優位性を示すために土壇場に表現を変えた」とまことしやかに噂された。
会見で「努めると、努めることとする、は何か意味が違うんですか」と質問すると、国土交通省の幹部は苦しい表情で「・・・日本語の表現です」とだけ答えた。しかし、これが、後に起工式の日程調整や予算配分などで、水面下で区間ごとのせめぎあいが始まるシンボルともなる。
今後、具体的な事業骨格が固まる過程で、全国的な世論から「北海道新幹線無用論」といった論調もでかねず、批判にさらされることも予想される。地元だけでなく、他の区間、全国に対しても、説得力を持った推進論と周到な調整が求められる。
(磯田佳孝)