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小野智華子選手を誇る

2012年09月10日

 パラリンピック競泳、17歳の日本代表アスリート、小野智華子選手が挑んだロンドン・パラリンピックが終了した。
 彼女が挑戦したのは視覚障害者の競泳だ。
 私にはオリンピックやパラリンピックでの選手経験はない。しかし、コーチやサービスマン、報道での参加経験はあるから、世界最高レベルの大会が持つ光と影の濃さは知っている。
 今回、彼女が挑んだのは4種目で、最高成績は100m背泳ぎの8位入賞だ。
 ただ、私が驚嘆するのは全4種目で彼女が自己記録を更新したことだ。普通、こんなことはありえない。大会の規模が巨大になればなるほど、自己記録を更新する確率は低下する。オリンピックやパラリンピックレベルでは、その確率は30%ぐらいだろう。
 国民の目線も「せめて、自己記録は更新してくれよな」と思うもので、確率の低さなどは無視するのだ。
 オリンピックには魔物が棲む。オリンピックやパラリンピックには「オリンピック病」という伝染病が蔓延するとも言われるが、それらはすべて選手の心の揺れから来るのだと思う。 
 
 選手村にいても、競技会場でも、個人の時間などはない。毎日が合宿で、起床・消灯・食事時間も決められ、ちょっと一人になりたいと思っても無理なことだ。また日本人に辛いのは、選手村の部屋にはバスルームはなくシャワールームがほとんどだ。日本人は肩まで湯に浸かることが、最高の気分転換になる。
 さらに彼女が成し遂げたことを知るために、私たちが想像力をいっぱいに高めて視覚がないと考えてみると、「そんなことはありえない」という解答しか出てこない。
 彼女を知ったのは、民放TV局が制作した特番だった。その日、はじめて母が娘を一人で学校へ行かせるシーンだった。母は遠くから見守っている。「一人で行けるようにならないとだめなのよ。自立しなければいけないの。私たちはいつまでも一緒にはいられないの」母の背中がそう語っているようだった。
 だからこそ、凄いことなのだ。全4種目に出ることも凄い。それは競技日が全期間に及ぶことだ。それだけ、心身のコントロールが大変な作業になる。そして彼女は全4種目で自己記録を更新した。それは自立した証明だ。
 物心ついたころから、ひとつひとつの出来事に「橋をかけて」渡ってきたのだろう。そしてついに彼女が言ったように、自分の力で「パラリンピックに橋をかけた」のだ。
 北海道民は、今目を閉じて心の目であなたを見ようとしている。それは老若男女の区別はない。
 心眼で見れば、あなたが切り開いた道が見える。あなたが架けた橋が見える。
 だから、北海道民はあなたを誇りに思えるのだ。

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プロフィール

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伊藤 龍治
1947年札幌生まれ。札幌啓明中では夏は野球、冬はスキー。旭丘高では夏はバスケット、冬はスキー。「スポーツ二毛作」実施者。早稲田大でスキー。日本初のアルペンサービスマン、世界初のジャンプワックスマンは自称ながら事実。スキーで4年おきの「骨折五輪」に3度出場。全日本アルペンコーチ。北海道新聞に「いい汗いい話」を12年半執筆。テレビ、ラジオ、講演などスポーツジャーナリストとして活動中。

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