買った。
買ってしまった。
ウェッジだ。
4月23日午後、ウェッジを買った。
ウェッジを買ってしまった。
あーあ…。
…体の芯にたまった熱がなかなかさめない。
この感じ分かってもらえるだろうか。
ディープ系のゴルファーなら一部なりとも理解してもらえるかも。

▲購入したトブンダのウェッジ。顔も気に入っている
買ったウェッジは「ゴルフ5」が製作・販売している「トブンダシリーズ」のひとつで、ロフトは52度。アプローチウェッジ(AW)に分類される。
フェースに最近ブームの<角溝>が彫られ、スピン効果が極めて高いとい
う。
買うつもりはなかった。いや買ってはならないと思っていた。23日の正午までは…。
23日正午までの私のウェッジ構成は、Pがロフト48度、Aが51度、Sが59度だった。
この顔ぶれで3年間余り戦ってきた。
何十ラウンドも通過してきた。
(度数の開きがアンバランスとの指摘もあろうが)ともかく、楽しくやってきた。何も足さず、何も加えず…十全に幸福なはずだった。
糟糠の妻ともいえる<51度のA>は私の身体になじんでいる。
しかし、23日の昼食後、魔が差した。
甘い声が聞こえてきた
「<角溝>のウェッジを使ってみららどう?」
「ピンをデッドに狙えるんじゃない?」
女性の声だ。
やめてくれぇ。………そこにいるのは魔女じゃないのか。
◇
足がゴルフ5苫小牧店に向いた。
良い雰囲気で入りやすい店だ。
(同じチェーン店でもやはり地元の店で買いたい。従業員さんの給与にプラス要因となるかもしれないから)
公認クラフトマンというプレートを胸につけた男性スタッフが対応してくれた。
私は目を伏せるようにしながら、おそるおそる尋ねた。
「角溝って、何か意味があるんですか?」
スタッフさんは一瞬間を取った。奇妙な間だった。じれて私が目を上げると、スタッフさんは、私の目の奥の方をじっと見詰めていた。
あぶない。
このスタッフは男性の顔をしているが、実は魔女かもしれない。
やばいぞ。
そう叫ぼうとしたが、とたんに意識を失った。
……気がつくと、私は料金カウンターで、クレジットカードの伝票に署名していた。
1万2千円。
24日に振り込まれる予定の定額給付金と同額ではないか。
これも魔女の策略か。
◇
23日深夜。
外は細かい雨が降っていた。
「いろいろあったけど…結局は良い買い物をしたよな」とつぶやき、新AWのフェースにチューをしてそのまま抱いて寝た。
次の朝、新AWはいっそう好ましい笑顔で、私のそばにいてくれた。
◇
さて、新AWでの初ラウンドは、25日、滝のカントリークラブ(札幌市南区滝野213、電話011・591・5361)が舞台だ。
魔女よ頼む。スコアにも責任を持ってくれ。
▼25日に回る予定の滝のカントリークラブのコース=昨年6月撮影

<口からシャンク>
「春なのに、セーター姿とは…クラブを振りにくいだろ」
「寒がりなもんで」
「ミスショットにつながるよ」
「そうですか?」
「セーターは事をし損じる、といってね」