年末・年始に古典落語の名作はいかが
2008年12月31日
暮れも押し詰まるなか、三遊亭円生の「鰍沢」を聞いた。
この作品は、キングレコードから出たCD「円生特選ライブ6」に収められていて、今から50年ほど前の1月に東京・人形町の寄席「末広」でライブ録音されたものだ。
物語の場所は身延山(山梨県)につながる山中の道筋。正月の参拝の帰りに大雪で道に迷った旅人が、一軒家に宿を頼む。お熊と名乗る美女が住んでいて、やりとりののち、お熊は旅人に毒入りの酒を飲ませて命と金を奪い取ろうとする。しかし…。
―――目をつむってこの鰍沢を聞いた。円生の声を通じて、降る雪、燃えるたき火、お熊の首に走る大きな傷、鰍沢の急流などが、鮮やかにまぶたの裏に描き出された。
聞き終わるまで24分。すごい。とってもいい。
これまでも何度も聞いたCDだが、あらためて描写の細かさに酔い、円生の名人芸の迫力に気圧された。
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円生が描く人物に、底抜けの「お人好し」はまずいない。
与太郎でもご隠居さんでもばか殿様でも、どこかに<底意地の悪さ>のようなものが浸み出して影をつくってしまう。
私にはそう感じられる。
笑顔の裏の本音、どことない薄情さ、ニヒルな上から目線、欲得ずくの交情…そんな類のトゲがやがて面にあらわれ、聞き手の心に刺さってくる。
けっして不快なわけではない。
それが円生の芸風というものなのだ。
むしろトゲが徐々に気持ち良くなる。
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円生が呼んでくるお熊は、絶世の美女だが、根の暗い小悪党でもある。いわば円生ワールドのお姫様。
性悪のお姫様に殺されかけるのは、旅人だけではない。円生の声に耳を傾ける私をはじめ…。
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円生「鰍沢」のCDは、書店や音楽店の落語コーナーに常備されていることが多い。ネット配信の「モーラ」(私も愛用)にも入っており、この料金は525円。
いかがでしょうか。

