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ミミカイツブリ 歌舞伎的な変身

2011年07月07日

早朝は上昇気流がまだ起こらないので地面に香りが溜まります。今日はニセアカシアの
花の香りが強烈でした。チモシーやイタリアングラスの花粉の匂いもします。遠くより乾草
させた牧草の香ばしい香りもしています。これからは香りの季節です。

おばんです。小太郎でごじゃります。

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               ■  ミミカイツブリ 歌舞伎的な変身  ■

変身といえばマンガのキャラクターが得意とする術です。それを当たり前にやってしまう
生物が自然界では普通にいます。鳥もその仲間です。

変身する鳥の中でも、極端に色や形状を変える仲間にカイツブリがいます。カイツブリの
中でも極端といえるのが「ミミカイツブリ」です。

六月十九日。通常なら北半球の亜寒帯地域に渡っているはずのミミカイツブリの夫婦に
野付湾に流れ込む川で会いました。完全な夏羽です。

眼の後ろ側に金色に輝く飾り羽が彗星(ほうきぼし)のようについています。真っ赤な瞳。
アイリングと呼ばれる瞼がさらに真っ赤。金と赤のコントラスが実に見事です。鮮やかです。
舞踏会に出したいほどの施しです。

頭と顔が真っ黒なので、いちだんとその彩りが映えます。さらに首から胸は赤茶色の地味
派手色で、より金色を目立てさせます。

これまでに完全な夏羽になった姿を見たことがありませんでした。冬羽のミミカイツブリは
白色と黒褐色のとても地味な色合いをしているので、この変身ぶりを眼にして感激です。

しかもこの夫婦、素晴らしい愛の告白劇を見せてくれました。

川下から泳いできたオスのミミカイツブリが、川上から来たメスにすーっと近づきました。
するとメスが顔全体の羽毛を前に立たせ、さらに大きく広げました。丸うちわを両側に
つけたような感じです。

歌舞伎役者の隈取化粧を思い浮かべました。黒い顔に赤い眼と黄金の隈取。くっきりと
した勇壮な表情です。

一方、オスもすかさず顔の羽毛を立て、くるりと反対を向き、水面に立ち上がる行動に
出ました。そして振り返ると、メスは嘴を下に向け、恥らいでもするかのような仕草を
しました。次にオスが下を向き逆の行動をとりました。交互に繰り返していると、両者が
立ち上がり、嘴をカキカキと合わせました。

次に首を倒すようにして、恥じらいのポーズをしました。オスとメスが交互に繰り返し、
盛り上がったところで、正面で向かい合い、見つめ、立ち上がり、胸を合わせました。
互いの思いを体でぶつけ合う感じです。

はじめて見る愛のディスプレイは一瞬でしたが、美しいダンスを見ているようでした。

ミミカイツブリは野付半島で繁殖したという観察はありません。ただ、この行動を見て
いると、もしかすると繁殖をしているかもしれないと期待を膨らませてしまいます。

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プロフィール

プロフィール

中田 千佳夫
なかた・ちかお。1950年5月6日、鳥取県米子市生まれ。大阪府立大学農学部(現在は生命環境科学部)獣医学科卒。京都大学理学部動物学科大学院・研修員(鳥類生態学専攻)を経て、ムツプロに入る。85年に中標津町で青い鳥動物病院を開業。犬猫を中心の小動物診療に励み、今日に至る。

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