奇跡の湖 〜 三方五湖 〜

2017年04月30日

舞鶴市から日本海沿いを車で走ってきて敦賀市の手前の道の駅「三方五湖」でひと休みした。

全体は見渡せないが、若狭湾に膨らんだ地形に五つの湖がある。直ぐ隣に「福井県里山里海研究所」があり、"世界の歴史の標準時を展示中"の掲示に惹かれて入ってみた。

びっくりした。地味な事務室にいた学芸員と思われる年配の方が丁寧に説明してくれたところによると・・・。

5つの湖のひとつ、「水月湖」の"年縞"なるものが2012年に考古学、地質学、自然環境の推移などで重要な年代測定の世界標準になったという。いわば〝歴史のグリニッジ天文台〟だ。

「水月湖」には流れ込む河川が無いなど、湖水と湖底が掻き混ぜられることがなく、幸いなことに周辺の断層の影響により長いこと湖自体が沈下を続けているため、ボーリングして分かっているだけで7万年分のプランクトンの死骸や鉱物などの沈殿物が明暗一対で1年という"年縞"となって奇跡的に静かに積み重なっているという。

1枚ごとの放射性炭素(C14)の残存量を測定すれば世界の遺物のC14と水月湖のデータを対比することで正確な年代測定が可能になるという。これから世界の歴史がどんどん書き換えられるかもしれない。

この研究を支えているのは在英の日本人科学者とのこと。国内で「場」が無く、受け入れてくれたのはイギリスの大学だった。地道に根気よく年縞を分析した成果だ。

昨今、間違った学芸員批判が物議を醸したり、"明日の成果"ばかりを求め、ポイント制で予算を配るような政策では息の長い研究が育つのも覚束ないことである。経済効率主義と軍事ご執心では科学分野の「日本力」が失われてゆく気がしてならない。

福井県は平成30年完成を目指し、現在の古い施設に変わり、研究展示、自然環境のシンボル、観光の拠点の機能を持った施設に取りかかっているという。古い建物を後にする時、少し安堵した。

三方五湖.JPG大雨後に濁る三方湖に対して、上部の「水月湖」は綺麗なまま。(福井県の資料より)

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