グリーンタフ型の温泉とは
2009年02月27日
<はじめに>
温泉は、普通、雨水などの天水や海水が、岩の割れ目などを通って地下深くしみ込み、地熱で温められたものです。
活火山はもちろん、いまは活動していない、かつて火山だった地域の地下には、マグマだまりや、まだ高温の岩体があるうえ、水が地下にしみ込みやすい断層が多く、当然、温泉が豊富です。
火山性の熱源がなくても、普通、地下を100m掘ると、地熱は3℃くらい上昇しますから、年平均気温が8.5℃の札幌市内だと、1000m掘ると、38.5℃くらいの温泉になるわけです。札幌市内の場合、地下1300mほどのところに、かつて海だった時代に海水を取り込んだ地層があって、濃い食塩泉が動力でくみ上げられています。
北海道の地質構造を調べると、本州の延長である南西部と、千島列島の延長である東部の地盤が衝突して日高山脈を形成し、一つの島になったことがわかります。そのため、間に挟まれた、かつて海だった地層があったり、植物が堆積して変成した石炭層や泥炭層があったりして、実に多様です。
ですから、温泉もバラエティーに富んでいます。石油や天然ガスを伴ってわき出る温泉や、鉄を溶かしてしまうような濃い酸性の湯もあります。硫黄の香りが漂う、温泉情緒がいっぱいの温泉地もあります。
その中で、あまり知られていないのが、グリーンタフ型といわれる温泉です。
<グリーンタフ型温泉>
北海道南西部や北海道中部の大雪山系から東部の知床半島まで、活火山がいっぱいあります。恵山や駒ヶ岳、有珠山、樽前山と恵庭岳、そしてニセコ火山群。十勝岳や旭岳、雌阿寒岳、羅臼岳もあります。
しかし、これらの火山が生まれるもっともっと昔の1600万年ほど前には、この地域は深い海の底にあって、海底火山が激しい噴火を続けていました。この時代の地層には、強い圧力と熱で変成した、緑色を帯びた火山岩が大量に堆積していて、これをグリーンタフといいます(図参照)。
その後、プレート運動によって大きく持ち上げられ、陸地となり、いまある火山が溶岩や火山灰を大量に噴出し、北海道の地形が作られました。
そのため、グリーンタフには、海水の中に溶け込んでいた塩分や石膏などの成分が取り込まれています。
内陸部にありながら食塩成分の多い「定山渓温泉」や八雲町の「見市温泉」などは、かつて、地層に取り込んだ塩分が、温泉水に溶け出したものだと考えられています。
また、近くに火山がないのに、中性やアルカリ性の純粋な硫酸塩泉がわき出ている場合があります。 ニセコ新見温泉や岩内町の朝日温泉、函館市南茅部の川汲温泉などは、グリーンタフに取り込まれた、石膏(硫酸カルシウム)が溶け込んだ、非火山性の「グリーンタフ型温泉」なのです。
また、火山地帯の温泉でも、食塩泉がよく見られるのは、グリーンタフの地層の影響を受けているからでしょう。
<種類が豊富な火山性の温泉>
では、火山性の温泉とはどういうものをいうのでしょう。
一般的には、マグマから発散される高温の火山ガスや水蒸気が、地下水に溶け込み、それが地層を流れ下るときにわき出てくるものです。
ガスの中には、硫化水素や二酸化炭素のように、岩の割れ目を通って、意外なほど遠くまで運ばれるものもあります。この間に温度が下がり、冷たい地下水に溶け込むため、温度が25℃以下でわき出てくるものもあります。「硫黄泉」とか「炭酸泉」と呼ばれるものです。
噴火口の近くからわく温泉には、温泉情緒を醸し出す、硫黄のにおいのする湯があります。一般的には硫黄泉といわれますが、正式な泉名はもっと複雑です。登別温泉、ニセコ五色温泉、ニセコ湯本温泉、雌阿寒温泉、川湯温泉などが有名です。
また、噴火口に近いほど酸性が強い温泉になります。
釧路管内弟子屈町の川湯温泉は、屈斜路カルデラの中央に位置し、硫黄山(アトサヌプリ=標高512m)が源ですが、湯のpHは1.3という、鉄も溶ける強酸性の湯です。
道南の恵山の火口から引湯する恵山温泉旅館はpH2.14。十勝岳の安政火口に近い十勝岳温泉・凌雲閣がpH2.3。ニセコのイワオヌプリの旧噴火口に泉源のあるニセコ五色温泉旅館はpH3.2です。こうした、酸っぱい温泉水には鉄やアルミニウムなどの成分も豊富で、火山からの恵みがいっぱい溶け込んでいます。
噴火口付近から地下を流れ下る温泉水は、岩石と反応し、地下水と混ざったり火山ガスを取り込んだりしながら成分を変化させます。硫酸成分が減り、重曹成分が増え、やがて単純泉の方向へ変化していきます。pHは酸性から中性、アルカリ性へと変化します。
ニセコを例に、標高の高い順に並べてみるとよくわかります。
①ニセコ五色温泉 含フッ素・食塩・苦味-硫化水素泉 pH3.2(弱酸性)
②ニセコ湯本温泉 単純硫黄泉(硫化水素型)pH4.72(弱酸性)
③ニセコ昆布温泉 含重曹-食塩泉 pH6.32(中性)
④昆布川温泉 含重曹-食塩泉 pH8.2(弱アルカリ)
重曹とともに食塩の成分が加わるのは、グリーンタフの影響だと思われます。
<参考>
pH3未満は強酸性
pH3~6未満は弱酸性
pH6~7.5未満は中性
pH7.5~8.5未満は弱アルカリ性
pH8.5以上はアルカリ性
グリーンタフ地域は、古い時代に海底火山活動があった地域です。現在の火山と重複する地域も多いのですが、火山性の温泉とは、ちょっと違う泉質になることがおわかりいただけると思います。
